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6課襲撃時にユーノがいたら eAse5psi ユーノTUEEEEEEEEEE設定だから苦手な人は下にスクロールしてくれ ―――舞い上がる火の粉、崩れ落ちる瓦礫、倒れる二人の騎士、その上空には不気味に 飛び回るガジェットの群と破壊された隊舎を見下ろす二人の戦闘機人。 正義の象徴でたる隊舎はかつての姿を失い、天を染める炎を立ち上らせていた。 彼女達の任務は、地上本部警備のためにエースを失った機動6課の制圧 …そして聖王の器の奪取 抗う【力】を持つ者は倒れ、この6課を太陽の様な笑顔で包んだ少女も奪われようとしていた。 守りたい、守りたい、守りたい、守りたい、 傷付き、意識を失った隊員達は最後までそう祈っていたはず。 その願いを打ち砕いた戦闘機動が口を開く。 「オットー、ルーお嬢様からの通信は? いくら何でも遅すぎる」 タイムリミットは近い。エース達が帰還したら帰還は難しくなる 「ルーお嬢様からの通信は無いよ。…ガリューも付いてる。大丈夫」 絶望に染まるはずだった。守りたかった。全てを奪われるはずだった。 ――そんな願いがとある男に届いた 「ルーお嬢様ってこの娘の事かい?」 不意にこの場にそぐわない透き通った声が響く。 「説得しようとしたんだけど攻撃してきたらちょっと眠ってもらったんだ」 燃え上がる隊舎から現れたのは、細身の男だった。 美しい蜂蜜色の長髪、透き通った翠の瞳、中性的な顔には妙な迫力が漂っている。 「っ隊員か!?」 ディードとオットーは同時に戦闘態勢に入る。 情報ではここにいる戦闘員は先程の騎士二名だけだったはず! 「僕? 6課の人間じゃないよ。僕は無限書庫司書長のユーノ・スクライア」 「何故その司書長がここに?」 オットーは考える。この男からはルーテシアを気絶させる程の強さが感じられない。 「私用でね、娘に会いに。そしたら6課がこんな有り様で。 意識を失う前にザフィーラからヴィヴィオと負傷した隊員達を頼むと言われたから、皆を転移させてたんだ」 ユーノは一瞬の間を空け、睨みつけるように言った。 「…それよりさ見てるんだろ? スカリエッティ」 ―ブン 音と共にオットーとディードの間にモニターが出現した。 「おやおや、珍しい人がいたものだね。無限書庫司書長ユーノ・スクライア殿?」 そのモニターに映っていたのは、この事件の中心にいるジェイル・スカリエッティ本人だった。 そんな男に怯む事無くユーノは告げる。 「顔を合わせるのは初めてだね、Dr,スカリエッティ。 僕はこれでも怒っているんだ。何故こんな事をしたのか説明して欲しい」 「説明!?そんなモノが必要かね?計画の邪魔になる敵を潰し、必要になるモノを返してもらっただけだよ」 「…そうか。こんな小さな女の子を使って、もっと小さな女の子を奪う……」 「それが人のやることかぁぁ!!」 ユーノは怒鳴りつけた。普段の柔和な彼からは想像もできない怒気を纏っている。 「フフフ…そう恐い顔をしないでほしいなぁ。 君とはもう少し話をしてみたかったんだが時間もあまり無い。今日は失礼させてもらうよ」 そこで彼は思い出したかの様に言う。 「あぁそうだ。ディード、オットー、帰還するんだ。」 「この男とルーお嬢様はよろしいのですか? 」 「あぁ。ルーテシアは必ずこちらに戻ってくるし、今の君達では彼には勝てないよ」 ―ブン モニターが消えた瞬間、戦闘機人のふたりはユーノに背を向ける。 「ルーお嬢様はいずれ返して頂きます」 告げるなり彼女達の周りから光が噴出し、次の瞬間には消えていた。 「…彼女達が戦闘機人か…、それに掃除も残ってるなぁ」 ユーノは上空のガジェットの群に目を向け溜め息をつく。 「疲れるんだけど、そうも言ってられないよね」 言うなり、ユーノは目を閉じ集中する。 思い浮かべるのは鎖。それも魔力で練った鎖では無く、鋼の鎖。 AMF、ガジェット達は魔法の力を強制的にキャンセルする力場を発生させている。 でも彼はそれを破る術を知っている。 「フルメタルバインド!」 唱えると同時にガジェットを挟む形で翠の魔法陣が顕現する。 「貫け!」 その魔法陣から現れたのは鋼鉄の鎖だった。 その鎖がガジェットの機体ん貫いていく。空を埋め尽す程のガジェットは翠に包まれた瞬間に全てが爆散した。 「転移魔法を無理矢理使った後のコレは厳しいな…」 苦しそうに呟きながら空に目を向ける。 するとそこには白い竜に乗った、見慣れた姿があった。 「…エリオとキャロ、来てくれたんだ。」 安心すると体が重くなる。 魔力量の少ないユーノにとって転移魔法と複数の束縛魔法は厳しすぎるものだった。 自分の頼り無さに苦笑いを浮かべながら彼はあっさりと意識を手放した。 長くなってしまったorz 中二病な強さなユーノ君を書きたくてやった。反省はしている。 この後の病院でお見舞い合戦が行われたのは間違い無いよ 14スレ SS オットー ディード ユーノ・スクライア
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ユーノとシグナムの歩き方 作者:ID Fu9wYKHI ――――――まったく、本当に私も変わったものだな。 当初はテスタロッサやヴィータ共にスクライアから依頼された遺跡調査団の護衛任務。 盗掘屋と遺跡内の戦闘中にスクライアと共に一団から離れるアクシデントに見舞われてしまう。 遺跡のオブジェに使われている特殊な鉱石が原因の天然のAMFによって魔法は効果はなさない。 ――おまけに落下の際に強く足を挫いてしまうと失態を犯す始末だ。 「これで応急処置はいいかな」 「すまないスクライア。護衛で来たはずが逆になってしまう」 「」 「心配はない。テスタロッサは勿論だが、ヴィータならばハンデがあったとしても盗賊風情に遅れはとらん」 「やっぱり信頼してるんですね。足の方は大丈夫……じゃ」 試しにレヴァンティンを杖に立ち上がってみるが、すぐにバランスを崩して逆にスクライアに寄りかかってしまう。 意外と広い胸板に思いっきり顔をつっこんでしまったが、意外にもスクライアは耐えて見せた。 「―――やっぱりその足で歩くのは危険ですよ。僕がおんぶしますよ」 「……っ!待て!それは……!」 「よくないですよ。怪我をして無理に動くと後々に痛い目に会うのは知ってるでしょう?」 「………わかった。魔法が付かえぬ以上はこうするしかあるまいか」 何故、提案に乗ってしまったのかは私自身もよくわからん。なのはの事故以来、奴も主も無茶無謀な行動に厳しくなったと思う。 おぶられて歩かれると、時折だが互いの顔が触れそうにくっつきそうな距離にあると少々恥ずかしい。(絶対にヴィータには見られてたまるか。こんな状況を) 闇の書の騒乱時ではテスタロッサやなのはの影に隠れがちであったが、スクライアもまた我らの呪われた運命を破壊した小さな勇者の一人 この数年近くで急に背も私と並ぶくらいになり、顔つきも童顔がちだが精悍さを増してきたと思う。 一緒に見てきただけに変化に戸惑っているのかもしれない。 「どうかしたか、スクライア」 「い、いえ……何でもないですよ。ただちょっと顔が近すぎるというか、少し圧迫感が」 「あ、ああ。すまない」 ……むっ。少々考え事をして強く抱きしめすぎたか。 何分、この胸も大きいだけで戦闘時では邪魔なものだと考えていたのだが、どうもまた大きくなっている節がある。(原因は間違いなく主の悪癖絡みが関係してくる) 最近のシャマルや教会の診断では分った事だが。年月を負う事に我らの身体データに変化が出てきている。 外されていく守護騎士の枷。つまりは魔法プログラムだった我が身が人間に近づいているとの事。 魂は器となるべき肉体に影響されるというが、私のこの気まぐれに似た行動も変化だとういのか? 無自覚だが、腕を磨き合う好敵手と戦友達がが思いを寄せる少年に…… 「―――やっぱりまだ通信魔法も駄目か。もう少し歩かないと駄目のようです」 「そうか。すまないが言葉に甘えさせてもらう」 「わかりました。……何か考え事でもしてたのですか?」 「……ただ少しばかり確認していただけだ」 そう、好意を抱こうが抱くまいが私がやれることは一つ。私の騎士として、いや私個人としての誓いを守るだけだ。 騎士は守るべき大切な者を守り共に歩むこと。 だがしかし……この大きくなった背中を見てると守られるというのも悪くはないものだ。 13スレ SS シグナム ユノシグ ユーノ
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直球ど真ん中デッドボール 作者: ID tTVnzd4H 15-597のつづき かくしてユーノに食事まで(ワイン二瓶空っぽにして)振舞ったアルビーノ家。 ルーテシアからは『人を困らせて遊ぶのは駄目』と宥められている内に一本の電話が掛かる。 相手は、メガーヌの腐れ縁にして悪友のクイント・ナカジマであり、用件も重ねて談笑話が続いていた。 <ちょっとメガーヌ。またスクライア君の事、からかって遊んだんだって?> 「あら?私はただ事実を申しただけですわよ。もうちょっとノリがよくて誘惑の駆け引きとか憶えたら完璧なのにね……」 <やめときなさい、うちの子達泣かすような片棒になりたくないわよ。はあ、ゼスト隊長一筋だった頃の純粋な貴方は何処に言ったのかしら……ルーちゃん睨まれても知らないわよ> 「ご心配なく。アノ子も知らない内に女の戦いに身を焦がす身。私の気持ちもわかってくれるわよ」 <………そっちの方が余計に心配ね。くれぐれも火種にならないようにね。リンディさんからにらまれそうだわ> 「火種だったら、そちらのスバルちゃんやギンガちゃんが作りそうで怖いわ。確か家庭教師してもらってるんでしたっけ?」 <ギンガが大学志望ですからね。言っておきますけど、家とスクライア君は健やかなる愛と生活が溢れていますからね、おほほほ> 「はあ、ゲンヤ君には怖くて聞かせられないわね。本当に惚気られると反応に困りますけどね。とにかく用件の方は」 ……一方でこちらはハラオウン家。 暖かな食事と会話が弾むはずの家族団欒の一時の筈だが…… 「ねぇ、フェイトさん。ユーノ先生とルーのお母さんって付き合ってるんですか?」 などというエリオの爆弾発言のせいで緊迫した空気が漂う爆心地とかしていた。 (あううう、やっぱりストレートすぎましたかね……) (直球ど真ん中デッドボールさ!一体何を見たんだいエリオ、キャロ!) (で、ですからルーちゃんのお家で遊んでたら、メガーヌおば様とユーノ先生が一緒に帰ってきたんですよ。そしたら……) (何だよそれ!どうしたもこうしたもないさ!フェイトにユーノ関係の話は地雷だって何回もわかってるだろう) (落ち着きなさいアルフ、まったくフェイトも昔から感情表現が下手というか、思いっきり甘えればいいものを) (リニスさん、それは無理難題かと。アリシアさん、フェイトさんのお姉さんなら、お願いですから何とかして下さいよ!) (あのね。私がどうのこう言っても今のフェイトの耳には戦場の龍に説法で聞きはしないって。はぁ後からユーノ呼び出すしかないかな……) 以下、念話で繰り広げられる山猫の説教に耳を傾けるお子様二人。 呆れるアルフと妹を宥める手を考えるアリシアの横では、本日のオカズのチキンクリームシチュー……を食べるスプーンをからからと廻すフェイトの姿があった。 当然の如く、目の焦点はあってなく宛らフェイトの 「うふふふ……本当にユーノったら人の気もしらないで……でも人助けしないユーノなんて考えられないし、でも綺麗な女の人ばかりなんて……はぁ、私が負けちゃいそうだよ」 15スレ SS フェイト ユーノ
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朝の光を受けた草原を歩く二人。 前を行くのはシックなメイド服に身を包んだ麗しの美少年、ユーノ・スクライア。 その後ろをおずおずと歩くのは金髪の長い髪をツインテールにまとめた美少女、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。 二人は草原の向こうにある市街地を目指して歩を進めていた。 「街は遠いですね」 「まあ仕方ないよ、ゆっくりぼ……私達は進んでいるんだし」 現在の速度をあげることはできるが移動で無駄に体力を減らしたくない。特にフェイトは鍛えているとはいえまだ少女だ。 年齢詐称薬で色々とごまかしているユーノは違うのだ。 加えて、敵対する参加者と出会った時には疲れてもう動けませんでは洒落にもならない。 命を賭けているゲームであるからこそユーノは慎重な行動を心がけている。 (本当はすぐにでも飛び出したいんだけどね……) 今もこの島の何処かにいる護るべき存在である高町なのはのことを考えると気が気でならない。 魔法が封じられている現在、ただの非力な少女であるなのはは参加者の中では最弱の存在だ。 保護をしてくれる参加者、支給された物の中にデバイスが入っている。 希望を抱かざるをえない。 (僕がこうして動いているということはクロノも今頃は何か動きを見せているはずだ) クロノ・ハラオウンについては心配していない。自分達の中で一番の実力者であり経験も豊富だ。 早めの合流が望ましいがなのはと比べると優先順位が格段に下がる。 (この先の街でなのはかクロノがいればいいんだけどな。フェイトとも運良く合流できたし) 二人が向かう街には様々な施設が存在する。この島に散らばった参加者達も最寄りの街を目指して移動していることだろう。 森の中を闇雲に歩いてなのは達を捜すよりは街で効率よく探したほうが都合がいいとユーノは判断した。 それとは別に、メイド服に代わるまともな服とパンツが欲しいというのもあった。 (中はスースーするし変な感じだ。履き慣れてないからなぁ、スカートなんて。 それに、できれば戦闘は避けたいなあ。フェイトを護りながらの戦闘は僕には辛いし、こんな着慣れない服で戦いたくはないよ) ユーノ自身戦闘には不向きな為に可能な限り争わずに街へと着きたかった。 まだ数時間しか経っていないのに激しい戦闘は御免なのだ。だが、その甘い考えは次の瞬間、消えてなくなることとなる。 「っ!」 殺気。誰かの視線をユーノは直感で感じる。ユーノはその場で移動をストップし、フェイトも同じくその場で動かないようにと指示を出す。 その指示を受けてクエスチョンマークを浮かべたかの如くキョトンとしている様子を顧みる余裕は今のユーノにはない。 そして、敵は濃い血の臭いと共にすぐに姿を現すこととなる。 「下がるんだ、フェイト!」 それを受けてからのユーノの行動は迅速だった。フェイトを下がらせて護りやすい立ち位置を作る。 頭の中では魔法の構築を始め、殺気に対する警戒心を高める。 一秒、二秒経って草むらの影から駆け出してくる一つの影。 「術式解放」 その言葉と同時にユーノの足元には翡翠色の魔方陣が展開する。 そして、影は魔方陣に驚きはするがそのまま勢いを落とさずに疾走する。 「ちっ……!」 だが、影が手に持つ野太刀を振るおうとした時には既に二人の姿はそこにはない。 一瞬の思索、影は横に跳び、いつの間にかに背後にいるユーノの手から放たれた翡翠の鎖をギリギリのところで躱す。 影の正体はラキオスのエトランジェ、高嶺悠人。手には先程の戦闘で奪った支給品の中に入っていた野太刀が握られている。 「まさかいきなり斬りかかってくるなんてね」 「……」 悠人は無言で再び走りだす。敵は斬る。ただそれだけを考えて。 他人の事情など知ったことか、と言わんばかりに野太刀を大きく――。 「チェーンバインド、射て」 振るえない。瞬間、悠人が迫るのと同時にユーノは即座にバインドを放つ。 悠人はその場で立ち止まり、野太刀を一閃。迫り来る翡翠の色をした鎖を切り裂くが幾つかは刃を通り抜け体に絡みつく。 ユーノはギリギリと歯を食いしばりながら手から繋がっている鎖を握りしめて悠人の動きを封じる。 そして、一人置いてけぼりなフェイトの思考が現実に戻り、おろおろと周りを見渡しようやく言葉を発すした。 「え……? 魔法? それにその色は……ユーノ?」 目の前にいる彼女はネギ・スプリングフィールドと名乗っていたはずだ。 加えて、体格は大きくメイド服を身につけているのは何故なのだろうとあれこれと疑問が噴出する。 だが、今使われた魔法はフェイト自身何度も見ており、見間違いなどする訳がない。 ぐるぐると思考回路を回して目の前にいる人物がユーノ・スクライアであることを理解した。 「事情は後で話すよ。それよりもフェイトは早く逃げて、ここは僕が抑えているから」 「嫌だよ! ユーノを一人置いていくなんて!」 「魔法が使えないのにどう戦うのさ? 有体に言ってしまえば、足手まといだよ」 「……っ」 この会場ではデバイス、それに類するものがなければ魔法は封じられたままである。それはデバイスなしで魔法を行使可能なユーノとて例外ではない。 そのような状態の中で魔法を使える理由。それは指にはめられている指輪、魔法発動体のおかげである。 元はネギ・スプリングフィールドが持ち主であったがこの島ではユーノに支給されており、この指輪を媒介にして魔法を使用したのだ。 一方のフェイトは魔法が使えないただの幼い少女。到底戦いなど出来る訳もない。 「……わかった」 しぶしぶながらフェイトは了承の意を示す。分かっているのだ、自分が何の役にも立たないということぐらい。 それでも、感情と理論は別だ。仲間を置いて一人逃げ出すということには当然拒否感がある。 今、自分が一番ユーノの為になることを考えた結果はやはり、この戦場からの離脱だった。 「でも、私は“逃げない”から! 助けを呼びに行くから! 絶対に戻ってくる!」 「うん、待ってるよ」 フェイトが走り始めたのと同時にパキンと鎖が砕け散った。 砕け散ったが瞬間、悠人は逃げるフェイトに向けて刃を向けようとするがユーノがそれを妨げる。 幾重もの鎖を発動させ、前へと進ませない。これらを野太刀で砕き、避けている間にフェイトは森の中へと悠々と走り去っていた。 「貴方の相手は僕ですよ?」 「……お前を斬り捨ててあの女の子を追いかける。悪いけど俺には余裕が無いからな」 「まあ、それが出来るのでしたら、ね」 ユーノは不敵に笑って魔法の術式を構築し、悠人は眉をしかめて野太刀を構える。 掌から飛び出す鎖を皮切りに再び殺し合いが始まった。 ◆ ◆ ◆ そして、他の参加者に助力を求めて走りまわった末にフェイトは香介達と出会ったのだ。 慣れない森を必死にかけずり回ったので息も絶え絶えだ。 だが、一番伝えなくてはならない一言は言えた。 『ユーノを助けて』 その言葉を誰かに届ける為にここまで走り、幸良く倒れて気絶する前に参加者に出会えた。 「……はぁ……っ、ぁぁ……」 「しっかりするじぇ!」 「そうだぞ! まだ死ぬには早い! というか目の前で死なれると気分悪いんだよ!」 優希と伊万里がフェイトを抱き起こしがくがくと揺らす。 その絶妙なグラグラ感は肉体的に限界だった身体を更に疲労させる。 それに気づいたのか、二人はあわあわと慌ててフェイトを地面に下ろし横たわらせた。 (さて、どうしたもんかな。このガキの言う言葉を信じていいものか。 一応外見上は必死にここまで走りまわって私頑張りましたって感じだ。 それがふりじゃなければ迷わず信じられるが今の段階ではそれは不可能だ) 香介はその光景を冷静に観察していた。何の感情も交えずに客観的にフェイトをただ見つめている。 何かおかしな挙動はなかったか。裏切り裏切られが常だった戦いを渡り歩いてきたブレードチルドレンとして勘を最大限に働かせる。 (まっ、助けるにしても俺には武器がない。武器もないのに人助けなんて論外だ、正義狂いって訳でもねーし。 信頼に値する何かがこのガキから俺らにもたらせない限り信じるメリットはねえ) 香介は決してお人好しではない。今ある現実をしっかりと踏みしめてどの行動をとれば自分達の利益になるかを考えられる少年だ。 仲間である亮子や歩であれば無条件にフェイトの言うことを信じただろう。 だが、あいにくと浅月香介という人間は人を殺すことも裏切ることも数えきれない程に行なってきた。 今更正義の味方じみたことをやるつもりはさらさらない。 「すいません……」 「気にすることはないじぇ!」 優希がどんよりとした空気には似合わない明るい声でフェイトを励ました。その言葉を受け、フェイトも少し笑顔がほころぶ。 その空気に割り込むかのように香介が刺すような目つきでフェイトを睨む。 安易に心を許すつもりはない。例えそれが少女だとしてもだ。自分が納得するまでは香介に協力する気はさらさらない。 「ようし事情と持っている情報を聞かせてもらおうか。悪いがそれも話さないでいきなり助けてくれと言われても信じねえからな」 「おい、そんな言い方しなくてもいいだろ」 「お前が口を開くと余計に拗れるからちょっと黙ってろ。さてと、じゃあ洗いざらい話してもらうぜ」 「わかりました……私が知っていることを、全てお話しします」 そうしてフェイトの口から語られたのは三人にはとてもじゃないが信じられない御伽話のようなものだった。 魔法、次元世界、時空管理局。普通に生きていく上で一生聞くこともない言葉の数々に口をあんぐりと開ける他ない。 「さすがにスケールがでか過ぎて信じられないじぇ……」 「おい少女! その魔法の中に好きな男を振り向かせる魔法はないか!」 「すいません、そのようなものはちょっと……」 「ちっ! 沢村をメロメロにする魔法がないとは……! 使えんぞ、魔法っっっっ!」 伊万里がくけーっと奇声をあげながら頭をかきむしる様子を香介はため息混じりにスルーして再びフェイトに向き直った。 このテンションに合わせていては身がもたないと香介は雨苗雪音の事件の時に学習している。 「まあそのぶっとんだ話は一応信じるとしてだ。お前が最初に言った言葉から推測するに誰かに襲われたんだろ」 「はい……」 「で。そのユーノって奴がお前をかばって殿を務めた。それでこのままじゃやばいって思ったから助けを呼んだ、こんなものだろ?」 香介がフェイトの伝えたいことを全て纏め上げて残りの二人に説明する。 この人ならば。持ち前の冷静さでユーノを助けになるに違いない。 だがその希望は香介が次に放つ言葉に打ち砕かれた。 「さてと、まずはお前の要望に対する回答からだ。率直に言うと答えはノー。俺はお前を助けない」 「……ぅ!」 「メガネ、見損なったじぇ! それでも男か!」 「話は最後まで聞け。武器がない俺には助けるなんて無理だ。無手で戦場に割りこむなんて御免こうむる。 そもそも武器がない俺が行ったって何の役にも立ちはしねえよ」 香介の支給品は携帯電話、スクール水着、大量の五百円玉と戦闘には不向きなものだ。 五百円玉は羅漢銭の用法で使えなくもないが専門でないために心許なく、拳銃やナイフなどの殺傷性がある武器でもない限り戦闘は行えない。 「それでしたらこれを使ってください。私には使えないのですが、貴方なら」 渡されたのは短機関銃として高性能を誇るFN P90。かつて、学校を舞台にした戦闘でカノン・ヒルベルトが使ったものである。 フェイトは両手で持ち上げるのが精一杯ではあるが香介ならば軽々と持ち運び、照準を定めて撃つこともできるだろう。 「オイオイオイちょっと待てよ。まだ俺らは出会って数分しか経ってもいないんだ。 んな訳の解らん奴にこんなの渡してもいいのかよ、俺がこれを受け取ったのと同時にてめえらを撃つかもしれないんだぜ?」 目の前の少女による短慮な行動に香介は呆れ混じらせながら言葉を紡ぐ。 余りにもお人好しが過ぎる。この年齢だからある程度は仕方が無いとはいえもっと警戒心を持てと発したくなる。 「確かにまだ私は皆さんとは会って数分、信頼関係も築いてはいません。こんな状況なのに人を簡単に信じるのも短慮だと言われるのも甘んじて受け入れます。 ですが、私は信じたいんです。人の温かさを、優しさを」 「……」 「お願いします! 私の友達を助けてください! 何でもしますから……!」 フェイトは何度も頭を下げて香介に縋りつく。ここで逃したら次の機会はいつかわからない。 こうしている間にもユーノは戦っているのだ。早く駆けつけなければ死んでしまう可能性だって孕んでいる。 最後のチャンスとおもってフェイトはしつこく願い出る。 「おいメガネ、こんなにも頼んでるのにまだ断るのかー。これで断ったら男がすたるじぇ」 「ま、助けてもいいんじゃね? 別に減るもんでもないし」 優希と伊万里は既にフェイトに協力をする構えだ。最初から断る気もなかったから疑う気もない。 伊万里はどうかは少し疑問に残るが、優希は馬鹿だと言われてもいいくらいお人好しだ。 「あーもうっ! どいつもこいつもバカみてえなお人好しだよ。付き合ってらんねーっての! …………けど、この短機関銃をもらった恩があるっ! 仕方ねえっ、武器がない俺にこんなあたりをタダでくれたんだ、やってやるよ!」 フェイトの顔がパアッと明るくなる。これでユーノを助けることが出来る、力になれる。 その歓喜の表情が思わず外に出てしまった。数瞬後、それに気づいて顔を真っ赤に染めたのはご愛嬌という所である。 「勘違いすんなよ、俺はこの武器との取引で応じただけだからな。だからそんなにニコニコすんなっ! ……さっさと行くぞ、ともかくお前がここまで走ってきた道を急いで逆走だ。道は覚えているか?」 「詳しくは覚えていません……でも方向は覚えていますっ」 「それだけわかれば何とかなる。さてと、人助けと洒落込もうじゃねえか」 四人はユーノが戦う草原に向けて進路を向ける。だがそれは遅すぎたのだ。 彼らが戦場に辿り着いた時、戦いはどうにもならない場面に進みすぎていた。 そこで見た惨劇の光景。ユーノ・スクライアはもう既に――。 ◆ ◆ ◆ 草原で繰り広げられる翡翠の守護者と血霞に染まったエトランジェの殺し合い。 戦況はどちらかに傾くという訳でもなく拮抗していた。 「はあっ!」 「シールド起動、通させないよ――――っ!」 力強く振り抜かれた野太刀がユーノの掌でギチギチと金切り声を上げる。 瞬間、突如ユーノの肉体が消え、悠人が前のめりに倒れこむ。 何が起こったと考える前にその場からなりふりを構わずに大きく跳躍した。 「くっ……」 後ろに転送したユーノは再びチェーンバインドの術式を構築し、悠人目がけて放ったのだ。 バインドに気づけたのは戦場を駆け抜けた経験からだったとしか言いようがない。一介の学生であった昔の悠人ではここまで戦うことは不可能であっただろう。 それでも、エトランジェとしての力を駆使しても。ユーノのトリッキーな戦法には考えもよらないくらいに苦戦をしていた。 (厄介な相手だな……アセリアやオルファみたいに単純ではない) 野太刀を胴へと向けて片手刺突、それをユーノはぐるりと身体を回転させてそれを躱し、流れるように掌底を放つ。 だが、悠人がそこから薙ぎへと移行するのを見て途中で掌を横にかざし斬撃を防ぐ。 (この人、強い……! 経験に裏打ちされているし、まるで疲労した様子がない。長期戦になりそうだね) そして、同時にユーノも悠人と同じような感情を抱いていた。 遠距離からバインドを放っても斬り捨てられ、接近できたとしても野太刀による鋭い斬撃が襲ってくる。 勝てない。ほんの少しでもそう考えてしまった自分自身を忘却の彼方へと置き去り、発破をかける。 数回の交錯の末にユーノは距離をとり、自分に分のある遠距離で戦うことを選択した。 相手の追撃は、ない。同じく悠人も後方に下がり小休止に入る。 「ここで退いてください、といっても貴方は退かないんでしょうね」 「当たり前だ、あの女の子はもう無理かもしれないけどアンタは違う。今ここで殺す」 互いに呼吸を落ち着かせ、次の戦闘へと準備をする。悠人は次はどのように攻めるか。ユーノは魔法を高速で構築し、どのタイミングで発動させるか。 もう中途半端では終わらない、否――終われない。 「一つ質問をさせて下さい。何故貴方は殺し合いに? この殺し合いで何を望むのですか?」 「答える義理はない。俺は何が何でも優勝しなければいけない、ただそれだけだ」 「それはもうやり直すこともできない程に深い思いなんですか?」 「そうだ、俺はもう人を殺した。今更後戻りなんてできない……! アンタに護りたいものがあるように俺にだって護りたいものがある。この議論はどこまで行っても平行線上だ」 殺し合いに乗った者と抗うと決めた者。両者の溝は大きい。増してや悠人は既にこの島で人を殺した。 何の関係もない赤の他人を自分の願いの為だけに屠った。その上での覚悟は生半可なものではない。 もう、誰にも頼らないと決めた。たった一人で修羅の旅路を往くと決めた。 「さてと、再開だ」 「…………っ」 どちらかの死を以てでしか終焉は訪れないと予知しているのか冷たい風が吹き荒び、互いの闘気が草原に充満していく。 野太刀の輝きも、翡翠の魔方陣もこの戦いの織り成す飾りとしかならない。 これは、どちらの願いが強いかという純粋な争いなのだから。 「行くぞ――覚悟して、絶望しろ」 「展開しろ、チェーンバインドっ!」 頭の中で構築したチェーンバインドを解放。その数実に四つ。 四本の鎖がうねりを上げて襲いかかる。悠人はまずは接近するべく走り始めた。 一つ目。横に軽く跳んで躱す。特に何の変哲もない。 二つ目。野太刀を袈裟に振るい鎖を断ち切る。断ち切られた鎖は音もなく消失した。 三つ目。正面からの払い。薙ぎ払われた鎖はあらぬ方向へ飛んでいく。 「これで最後だ!」 四つ目。身体を横に僅かにずらしスレスレのところで鎖との衝突を避け、そのまま強く横に薙ぎ、鎖を叩き斬る。 もうユーノの前に障害はない。後は野太刀で斬り殺して終わりだ。 そう、考えていた。 「いつから鎖が四つだけだと錯覚していたんだい?」 「があっ!」 突如腹部に迸る衝撃による痛み。何が起こったか理解ができない。 どうして地面から鎖が飛び出ているのだろう、と。 地中から飛び出した鎖が悠人の体を強かに打ち鳴らし、くの字に曲げる。 強い痛みにより野太刀が手から離れていく。ああ、まずいと思ったその時は既に手遅れだった。 「はっ!!!」 まだ終わらない。ユーノは転送魔法で悠人の懐まで移動、掌打による追撃を決行。 双掌による渾身の一撃が悠人にドスンと突き刺さる。 その一撃が強烈だったのか勢い良く吹き飛び、口からは逆流した胃液がたれ落ちる。 身体はそのまま地へと倒れ込み、起き上がることは――。 「っぅぅ、おぉおぉぉおおお!」 ふざけるな、まだ自分は倒れてはいけない。 ああ、そうだ誓ったのだ。この世界の何もかもを蹂躙し尽くし、斬り刻んで叩き潰して滅する。 全ては元の世界で囚われの身となっている妹の為に。 その行いが踊り狂うマリオネットだろうが、前座ですらない道化であろうが関係ないのだ、悠人には。 優勝して一刻も早く帰還してラキオスのエトランジェとして戦場に立たねばならない。 (佳織を救うためにっっ!) 願いは元より変わらず、定められた道を雷鳴の如く疾走する。 高嶺悠人の髪の毛一本から血の一滴に到るまで高嶺佳織に捧げようと決めたのだから。 この身が怪生の存在と成り果てても願いだけは失わない。 覚悟は完了した。後はデイバッグに入っているとある『神剣』に願いを乗っ取られないよう気を強く持つだけだ。 「出て来いッ!!!」 犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ!! 犯せ、犯セッ犯せ犯セッ、犯セ犯セッ犯せ犯セ犯せ、犯セッ犯せ犯セッ犯セッ犯せっっ!!!!!! 眼前にいる名前も知らぬ少女を淫靡なる世界へと引き込むのだ。 神剣が告げている。身体が知っている。それは至上で天壌にも登る快楽だということを。 無理やり組み伏せて自分のエネルギーを相手に対して放出する。何度も何度も嫌になるという概念が消えてなくなるまで何度でも。 ただ、したいから。屈辱に濡れるその顔はスパイス、平らな胸は歯形がつく程にしゃぶりつくしたい。金色の髪は白に染めたくなる欲求を膨らませる。 神剣が叫ぶ声には歓喜の声が。それにつられて悠人も思わず獲物を見つけた獣を想起させる獰猛ないい笑顔をしてしまう。 構わない、願い以外はどうなってしまっても構わない。 「誓ィィいいいィィイイいいいいいいい!!!!!!!」 そは誰も知らず届かぬ至高で永遠なる神剣なり。我が破壊の渇望こそが原初の荘厳。 創造しろ。永遠なる旋律を。誓え、世界を犯し尽くすと。 高嶺悠人はこれより――――悪鬼となる。 「あれ、は――――っ!」 デイバックから出されたのは赤と黒に染められた片手剣。発する妖気は先程の戦闘で血を吸ったせいか禍々しさを増している。 悠人はその剣――『誓い』と呼ばれる永遠神剣を使いたくはなかった。 これを使うと自分が自分でなくなってしまう感覚が纏わり付き、凶気に感化されて本能のままに暴れたくなってしまう。 誓いは本来悠人が持つ『求め』とは違い、何もかもをぐちゃぐちゃにする凶悪性を持っている。 それは肉体、精神、記憶。高嶺悠人たらしめるすべてを削り取っていくのだ。 「行く、ぞ……」 ゆらりと立ち上がる。手には魔剣である誓いを。心には最低限の大切な思いだけを残し他は破壊と性の欲望にあてる。 空気が、変わった。悠人の纏う空気が血と臓物の入り混じる戦場の狂戦士へと完全に成り代わる。 これこそが本物。悠人が一歩歩く毎に脳裏に迸る恐怖という圧倒的な感情。 「斬り、拓く」 悪鬼が嘲う。ニィっと口を歪ませそれはもう楽しそうに。 眼の前から発せられる絶望的なまでの人外感に嫌になるほどの非日常性。 滴り落ちる冷や汗がユーノの動きを鈍らせる。 言うまでもないがプレシア・テスタロッサの時の庭園への侵入、闇の書の残骸との最終決戦を上回る。 こいつはやはり化物だと嫌でも理解してしまった。 「っ!? シールド全開、一点集中ッ」 そうして気を取られている内に地面を踏みしめる鈍い音が鳴ったと思ったが刹那、悠人はユーノへと接近していた。 黒と翡翠が激突。ガガガガガッとドリルで地面を削るような音が掌と剣から鳴り響く。どちらも進まず、されど後退せず。 (重い斬撃……! 受けきれないよ!) ユーノは斬撃を正面から受けきれないと即座に判断、後ろに跳び衝撃を軽減させる。 悠人はそれを追うように前に跳び、逃しはしないと言わんばかりにギラギラとした目を殺気と性欲で染め上げる。 「堕ちろ」 黒の穿孔が抉るようにユーノの肩目がけて飛び込んでくるが、転送魔法で余裕とまではいかないが何とか躱し、距離をとろうとする。 接近戦主体の悠人相手には遠距離で戦う他ない。更には誓いによる恩恵を受けて全体的に動きのキレも良くなっている。 (やばいやばいやばいっ! 僕じゃとてもじゃないが勝てない……) チェーンバインドを幾つか飛ばすが、誓いにあっさりと防がれて消えてしまう。これでは放出するだけ魔力の無駄である。 加えて、バインドで拘束したとしても制限の影響か拘束時間が極めて短い。 それでもユーノ自身は切り札はある。あるのだが、それを使えば確実に人を殺してしまう。 一応の用意はしてあるが使いはしないだろう。 「だけど……」 恐怖と狂気が蔓延る戦闘の最中だというのにかつて護れなかった一人の少女が脳裏に浮かぶ。 それは今の自分をかたどる原初たるもの。白の少女が赤に染まった地獄のような一日。 血塗れで病院に搬送され、無残にもベッドでその姿を見て愕然とした。 眼の前が真っ暗になるとはこのようなものかと他人事みたくも考えた。 「僕はまだ死ねない」 家族。友達。仲間。病室に入った途端に誰もが自分を白い目で見る。 ああ、そうだ。当然の事だ、結論は分かりきっている。 ユーノ・スクライアが高町なのはの不調に気づいていれば。 ユーノ・スクライアがやり過ぎな訓練、エクシードモードを止めていれば。 ユーノ・スクライアが高町なのはにレイジングハートを渡さなければ。 ユーノ・スクライアが魔法で助けを呼ばなければ。 ユーノ・スクライアがジュエルシードを封印していれば。 ――――高町なのはは死にかけずに済んだ。 始まりは突然に。全てはユーノ・スクライアが引き起こした。 何の価値もない塵が星を堕としたという大罪、極めて悪質。 それからは感情が人間としてあり得ないくらいに平坦となり、無の境地へと至る。 涙を流し、哀しむこともできなくなった。心から笑い、喜ぶこともできなくなった。仕事を溜め込み、楽をすることをしなくなった。 喜怒哀楽の中唯一残った自分への怒り。ただそれだけを糧に生きていくことにした。 「チェーンバインドッッ! 全弾、射っ!」 傷ついた彼女達の為に身を投げ打ってフォローをした。できるだけ彼女の傍にいてリハビリなどの世話した。 病院代は全額保証、無限書庫での給料はなのはにほとんどを注ぎ込み、最低限の生活費だけを手元に残した。 無論、なのはの家族はそれを拒否した。子供にそんなことをさせる訳にはいかない。君のせいじゃない。 だが、もういいのだ。自分の何もかもがどうでも良くなってしまったのだ。 あの時の視線を彼はもう脳裏に刻み込まれてしまった。もう戻れない。自分が、わからない。 「シールドっ、前方へ全力展開」 高町なのはの笑顔が好きだった。 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンのはにかんだ顔が好きだった。 八神はやてのしたり顔が好きだった。 クロノ・ハラオウンのむっつりとした顔が好きだった。 他にも挙げられないくらいに好きなモノはたくさんある。 あのあたたかくもやさしいひだまりが――愛しかった。 だが、全部泡沫のなって消えてしまった。罪人である自分が夢を見る資格はない。 声が聞こえるのだ、罪と罰を贖えと。 「ァァァァァァアアアッ!!」 そんな時にユーノはこの殺し合いに呼ばれた。やることは最初から決まっている。 “自分を除く”誰一人を欠けさせずに脱出。仲間をあの日常へと回帰させたいが故に。 どのような手を使ってでも護ってみせると決意を固めた。 「ディレイドバインド解放! 搦めとれッッッ!」 それならば何故今相対している敵を殺さない? 何でもすると誓ったのだろう。この手を汚してでも護ると誓ったのだろう。 その疑問に対する答えは足し算よりも簡単だ。認めてしまえばいい、他者の排斥を。 戸惑うことはもう止めたはずだ。 「ガッ……ァ……!」 それらの答えが出ぬままに地に伏せた。元々前線で戦うタイプではないユーノにしてはよく持った方だ。 バインドとトランスポーターを駆使して戦った結果は敗北だった。 攻撃に殺意がないという隙を見ぬかれ、最終的に強引に押し切られてしまった。 「さてと、犯させてもらうぞ。アンタの魔力を、いただく」 犯される。その言葉は不思議と実感があった。自分は男であるというのに犯すとは片腹痛し。 思わずククッと薄く笑ってしまった。何だ、まだ自分は笑える余裕があるじゃないか。 ――もう、いいよね? ■しても。 それが誰に対しての了解だったのか。ユーノはついに禁忌への断を下す。 殺意と狂気と浅ましさと痛みと腐臭と血と臓と黒と赤に塗れよう。 眼前の悪鬼を――――殺そう。 前を向く。敵は既に射程範囲内にいる。術式行使は可能。ただ、その術式を発動させたら、相手は死ぬ。 迷うものか、殺してしまえ。もう時計の針は振りきれて二度と元には戻らない。 決意は狂気へと成り代わる。 「バインド、全弾解放」 その声は自分のものとは思えないくらい冷たく感情がなかった。 これから人を殺すというのに感情は全くの動揺がない。 人として何かを思うのが当然なはずなのに。 「囚えて固めろ、封鎖の檻」 空間から幾つもの緑の鎖が突如出現し、悠人へと襲いかかる。その数は数えきれない程に膨大。 手に持った誓いを振ることで何本かの鎖は斬り捨てられるがその間にも鎖は身体へと絡みつきやがては全身を締め上げられる。 鎖は今まで繰り出したのとは違って魔力を強く練っている。そうそう簡単には外れない。 翡翠の檻へと閉じ込められた哀れなる狂戦士よ。沈め、血溜まりの底へ。 「アレスターチェーン」 パチンと指を鳴らすのを合図にバインドが締め上がり悠人の体をねじ曲げる。 ボキボキと骨が折れる音が聞こえる。 想像を絶する痛みを抑えきれないのか苦痛の呻き声が聞こえる。 ガボガボと口から血を吐き出す汚らしい音が聞こえる。 近くで聴いて分かるが――――ああ、“いい”音だ。完殺にして全殺、全殺にして絶殺だ。 何処からどう見ても致命傷でありもう助かりはしない。 「がっ…………ォ、………………ィ」 悠人が最後に思ったのは最愛の妹の無邪気に笑う姿。ここで自分が死んだら佳織はどうなってしまうのか。 そんな回想を思い浮かべる瞬間も無く、全身がねじ切られ破裂した。血と内臓がユーノの身体に降り注ぐ。 まるでシャワーを浴びているみたいだ、と他人事のように感じた。 初めての人殺しは苦い血の味だった。甘いキャンディのような癖になるものではない。 それはまだ、自分が狂気に染まりきれていないからだろうと判断。 どちらにしろ戦いは、ユーノの勝利で終わった。その結果だけで十分なのだ。 「……ぅ!」 後ろから聞こえてきた小さな声にユーノは振り返り、視線の先にいる四人の人間をぼんやりと見つめる。 その中には先ほど逃がしたフェイトも含まれていた。 この残酷な光景をフェイト達に見せてしまったことに少しだけ罪悪感が芽生える。 だがそんなことは些細だ。そう、とるに足らないことである。 ただフェイトは後ろに“逃げた”。 当然だ、今のユーノは頭から血をかぶっており、傍から見ると気が狂った殺人鬼と認識される。 フェイトがびくびくと離れていく姿を見たとき、ユーノの中で何かがポッキリと折れた気がした。自分の大切なタカラモノが粉々に砕け散る。 自分の拙い心の軋みに思わず溜息をつく。 悲しいなんて感情はとっくに忘れたはずなのに。眼球は乾いて涙も出ないはずなのに。 どうして悔いているのだろう。どうして苦しいのだろう。どうして哀しいのだろう。 ――――どうして目からは涙が零れ落ちるのだろう。 「ああ」 それは一目瞭然、誰にでもわかる簡単なこと。 「僕は、諦めきれなかったんだ」 友人達と他愛もない話をして笑いたかった。浸りたかったのだ、誰も欠けずにいるひだまりに。 だけど、その願いはもうおしまい。少女は自分を明確に拒絶した。 あの場所にユーノ・スクライアはいてはいけないのだ、と強く強く認識してしまった。 前を向き歩き出す。もう、後ろは見ない。振り返ってはならないのだ。 「待って……ユーノ……! ねえっ! お願いだからっ! きっと理由があるんだよね! そうだよね!」 「…………さようなら、“ハラオウン”さん。もう、会うことはないでしょう」 「あ、ああ……ぁぁああああぁぁぁあぁぁあああっっ!!!!」 伸ばした小さな手は、もう届かなかった。 あのやさしくてあたたかだったひだまりは二度と還って来ない。 【高嶺悠人@永遠のアセリア 死亡】 【I-6/一日目/早朝】 【浅月香介@スパイラル~推理の絆~】 【状態】健康、 【装備】月臣学園の学生服、FN P90(50/50)@スパイラル~推理の絆~ 【所持品】支給品一式 携帯電話 大量の五百円玉@魔法先生ネギま!、スクール水着@魔法先生ネギま!、予備弾倉×3 【思考】 基本:知り合いとの合流 1:どうしたものか、この状況。 2:とりあえず殺し合いには乗らない 3:時間軸の違いと怪我の治りについて困惑。 ※参戦時期は12巻終了後 【片岡優希@咲-Saki-】 【状態】健康 【装備】 【所持品】支給品一式(水を三分の一消費) 不明支給品1~3 【思考】 基本:???? 1:困惑。 【関口伊万里@スパイラルアライヴ】 【状態】健康 【装備】 【所持品】支給品一式、不明支給品1~3 【思考】 基本:???? 1:困惑。 ※参戦時期は最終話終了後 【フェイト・テスタロッサ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのは】 【状態】:疲労(大) 【装備】:なし 【道具】:支給品一式、不明支給品0~2 【思考・状況】 基本:???? 1私は―― ※二期終了後からの参戦です。 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 [状態]:疲労(極大) 、魔力消費(極大)、ノーパン、十八歳ぐらいの姿、強い自己嫌悪、血塗れ。 [装備]:殺季のメイド服@操り世界のエトランジェ、誓い@永遠のアセリア [道具]:支給品一式 魔法発動体@魔法先生ネギま!、赤いあめ玉・青いあめ玉年齢詐称薬@魔法先生ネギま! [思考・状況] 基本:???? 1:???? ※二期終了後(高町なのはが撃墜された後)からの参戦です。 ※I-6に金属バット、葛葉刀子の野太刀@魔法先生ネギま!、支給品一式×2、不明支給品0~3が放置されています。 H-6に山田妙子、笹塚隆平のデイバッグ、折れたサバイバルナイフ、拳銃(詳細不明)、 ハイスタンダードデリンジャー(0/2)、、二人の遺体は置き去りにしました。 【葛葉刀子の野太刀@魔法先生ネギま!】 麻帆良学園に勤める葛葉刀子が得物として利用する野太刀。たぶん、かなりの業物。神鳴流剣士が使うぐらいなので。 【魔法発動体@魔法先生ネギま!】 ネギがエヴァンジェリンから受け取った指輪。これをはめていれば杖やデバイスを使わなくても魔法を発動させることが出来る。 【FN P90@スパイラル~推理の絆~】 左右臨機応変に構えなおすことを可能なすごい短機関銃。それを可能にさせるのは銃下面に排莢口があるからである。よく漫画にも出てくる。 弾薬は特製で高いらしい。原作では学校の戦いでカノン・ヒルベルトが使用した。 Back Double R -real replay- 時系列順で読む Next きみとふたりで Back Double R -real replay- 投下順で読む Next きみとふたりで Back 剣と銃のセレナーデ 高嶺悠人 GAME OVER Back 浅月香介の女難 浅月香介 Next 壊れた世界たち Back 浅月香介の女難 片岡優希 Next 壊れた世界たち Back 浅月香介の女難 関口伊万里 Next 壊れた世界たち Back 浅月香介の女難 フェイト・テスタロッサ・ハラオウン Next 壊れた世界たち Back Qデイバックにメイド服があったのですがどうしたらいいでしょうか?ちなみに僕は男で今の状態が裸なんですが……A着ればいいんじゃね? ユーノ・スクライア Next [[]]
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【名前】ヴィータ 【原作】魔法少女リリカルなのはA s/Strikers 【声優】真田アサミ 【種族】守護騎士(ヴォルケンリッター) 【性別】女性 【年齢】6歳程度(外見年齢) 【外見】 オレンジの三つ編みに小柄で幼い容姿。ややつり目。 【性格】 勝ち気で意地っ張りだが一途な性格で、仲間や家族を大事に思い、その安全や成長に責任感を抱く。基本的に無愛想だが、仲の良い相手には豊かな表情を見せる。 【原作での設定】 ロストロギア・闇の書が搭載する防御プログラム、ヴォルケンリッターの一員で、鉄槌の騎士と呼ばれる。当代の主、八神はやての家族を死なせない為、仲間達と共に闇の書を完成させようとしていた。その過程でなのは達と出会い、戦いの果てに仲間となる。その後ははやてと共に時空管理局に所属、10年後の機動六課設立時にはスターズ分隊の副隊長として活躍する。 明確な参加時期は、初登場作品の書き手に一任。 【面識のある参加者】 名前 呼び名 関係 高町なのは(A s) なのは 敵 フェイト・T・ハラオウン(A s) テスタロッサ 敵 八神はやて(A s) はやて 大事な家族。超べったり ユーノ・スクライア ユーノ 敵 クロノ・ハラオウン クロノ 敵 シグナム シグナム 長い年月を共にした同胞 シャマル シャマル 長い年月を共にした同胞 ザフィーラ ザフィーラ 長い年月を共にした同胞 【技能・能力】 能力名 内容 魔法 自身の魔力を用いて起こす技能。特に古代ベルカ系に優れる。 デバイス操作 デバイスを扱う技能。特にグラーフアイゼンの扱いに優れる。 教導 他者を教え導き、能力を高める技能。特に打撃・防御関係の教導に優れる。 以下、リリカルなのはクロス作品ロワイアルにおけるネタバレを含む +開示する 【ロワでの面識(105 未知あるいは既知との遭遇の時点)】 キャラ名 呼称 関係 初遭遇 高町なのは(A s) 高町なのは(高町なんとか) 敵対 未遭遇 フェイト・T・ハラオウン(A s) テスタロッサ 敵対 未遭遇 八神はやて(A s) はやて 大事な家族、主→偽者? 未遭遇→(死体)099 Knight of the Rose(前編) ユーノ・スクライア ユーノ 敵対 未遭遇 クロノ・ハラオウン お前 敵対→仲間? 042 盟友(前編) シグナム シグナム 長い年月を共にした同胞 未遭遇 シャマル シャマル 長い年月を共にした同胞 105 未知あるいは既知との遭遇 ザフィーラ ザフィーラ 長い年月を共にした同胞 未遭遇 ギルモン ギルモン 敵対→仲間 018 家族(前編) キング 敵対 ?(名前は知らない) 018 家族(後編) 八神はやて(sts) はやて 敵対、ギルモンの仇 018 家族(後編) ヒビノ・ミライ ミライ 仲間? 042 盟友(前編) アグモン アグモン 仲間? 042 盟友(前編) アーカード アーカード 敵対、クロノとアグモンの仇 042 盟友(後編) セフィロス セフィロス 敵対 099 Knight of the Rose(前編) クアットロ ?(名前は知らない) 105 未知あるいは既知との遭遇 高町なのは(sts) フェイト・T・ハラオウン(sts)
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人間は死んだ時、その事実を惜しみどれ程の人が悼み涙を流してくれるかで、その人物の価値が分かるという言葉がある。 その言葉の定義に当て嵌めるならば……高町なのはという人間は多くの人から愛されていたのだろう。 彼女の葬儀……出身世界での彼女の立場と事情を考えて行われた地球とミッドチルダでの二度の葬儀。 多くの者が弔問に訪れ、参列し、嘆き涙を流した。 かつて共に彼女と戦った同僚である教導隊の面々も。 彼女が次代を担う存在として鍛え上げた成長した教え子たちも。 彼女の上司、部下、知人、友人に至るまでの多くの者たちが。 彼女の喪失という事実を悼んだ。 だがその葬儀の参列者の中に、終ぞ姿を現さなかった彼女にとって他人とも言えない近しい人物が数名いた。 無限書庫の若き司書長――ユーノ・スクライア。 彼こそが、その例外の内の一人でもあった。 魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed 幕間1 ユーノ・スクライア 「司書長、ではお先に」 「うん、お疲れ様。早く帰ってゆっくり休みなさい」 「あ、はい。……司書長も、体にはお気をつけて」 「あはは、大丈夫。このくらい平気だよ」 残務を終えた司書が一日の務めを終え退室していくその姿を、ユーノ・スクライアは優しげな表情と口調にて見送る。 彼女で残務に残っていた司書も最後。自分ひとりが残された広大な無限書庫の中で、ほんの数秒だけ休憩がてらに背筋を伸ばす行為を行った後、再び仕事へと集中するように戻っていく。 今日中に済ませねばならぬ仕事が残っているわけでもなければ、期日にはまだ余裕のある案件が少々残っている程度に過ぎない。 夜も遅くなりかけ、疲労を溜め込むくらいならば本来は彼もまた仕事を切り上げ帰って休むというのが賢い選択というものである。 だが―― 「……どうせ、明日は休みだしな」 そんなものなどまるで必要とはしていない、そう言わんばかりの口振りで漏らすように最も手間取りそうな作業から手を出していくことにする。 ああ、どうせならこの仕事、家に持ち帰って出来ないものだろうか……等と本気で考えながら只管に作業のみにユーノは埋没していった。 こうして仕事をしていることが一番落ち着く、そして何よりも己にとっては救いなのだとユーノ・スクライアは本気で思ってもいた。 広大な無限書庫で、舞い込んでくる大量の仕事を我武者羅になって片付け、それだけでなく過去の資料を改めて整理し直したり、部下の手間取っている案件を手伝う(事実上は自らの手で片付けたり)等…… 明らかなオーバーワーク。ワーカーホリックという言葉そのものを体現したかのようなその姿。 この半年で、すっかり定着してしまったユーノ・スクライアの姿がそれだった。 寝て、起きて、食べて、仕事をして、また寝て。 凡そ、この半年間のユーノ・スクライアの生活を表すとしたら正にそれだった。それだけだった。 体が覚えている生活習慣をリズムのように繰り返す。 淡々と、延々と、黙々と……一種の惰性のように。 体が痛めつけるように、悲鳴を上げて拒絶されても構わずに、そんな風に延々とただ仕事という作業に埋没し、何も考えず、何も思わず、何も抱くことなく。 ただそうやって生き続けた。 仕事に没頭していれば、省みる事も無く、何もかもを捨て去って、一心にそれのみに己の全てを傾けることが出来たから。 只管に視野を狭め、只管に耳を塞ぎ、只管に思考を放棄し続けて。 逃げることの出来ない逃避先に執着するかのようにしがみ付き、それのみを行い続ける。 部下や友人たちからの忠告や心配の全てを遮って、省みることも無く。 この半年の間、彼はそうやって生き続けていた。 幽鬼にように頼りない足つきで何とか自宅にまで辿り着く。 そのまま何をするわけでもなく寝室に直行、ベッドにうつ伏せに倒れこむように寝転がる。 働きすぎて蓄積した疲労の限界か、急激に襲ってくる睡魔は抗うことも出来ないほどに強烈なものだ。……尤も、抗おうなどと思ったこともないわけだが。 どうせなら、このまま永眠させてくれよ。 いつもそんなことばかりを思う。いや願っているのか。 ……そうすれば、“彼女”にまた逢えるかもしれない。そう思ってもいたから。 しかし…… 「……でも……合わせる……顔もない……か……」 こんな無様な情けない姿、彼女に見せてしまえばそれこそ説教もの。否、愛想を尽かされて呆れて逢ってもくれないかもしれない。 何だ、じゃあ結局逢えないじゃないか。そんな失望と悲しみだけが霞んでいく意識の中で胸中に重く広がり淀んでいく。 生きていても彼女に逢えない。死んでしまっても多分逢ってもらえない。 ……じゃあ、僕はどうすればいいんだろう? こればっかりは無限書庫のどんな資料を漁ったところで出てこない。本当の難問だ。 答えなどまるでない奈落の底の絶望の深さを実感しながら、ユーノ・スクライアの意識は闇の中へと沈んでいった。 ……出来るなら、夢はみたくない。そう強く願いながら。 結局、誰が一番悪くて間違っていたのだろうか? 究極に答えも出ない下らない問いではあるが、いつも考えながら結論として抱く答えは一つだ。 ――即ち、ユーノ・スクライア。 己こそが全ての元凶なのではなかろうかと、そう考えられずにもいられなかった。 十年前、ジュエルシードなど発見しなければ。 事故とはいえ97管理外世界などにアレを落とさなければ。 責任感だなんだと見栄を張らずに管理局に事情を報告して任せていれば。 彼女に手助けしてくれるように頼みさえしなければ。 ……いいや、そもそも自分と彼女が出逢ってさえいなければ。 彼女――高町なのはは死ななくてもよかったのではないのか? こんな世界に彼女を巻き込み、その道を進ませてしまった。 取り返しの出来ないことをしてしまった。 なのはが死んだ責任、それは元を糺せば自分のせいではないか。 そう、ユーノは自分自身を責めずにいられなかった。 ユーノ・スクライアは責任感の強い人間でもある。 ジュエルシードの発見、その事故による紛失とそれ故の単独での回収。 余程に責任感が強くなければ、そんなことはまず出来ない。そもそもそう動くことも出来ないだろう。 勇猛果敢な人物の陰に隠れ、忘れ去られがちでもあるが、彼もまた己のやってきた事にはしっかりと責任をもまた抱く人間なのである。 故にこそ、高町なのはがあの日、死んだと知らされたあの時、ユーノは耐え切れなかった。 生来の争いを好まぬ温厚な性格も故にか、基本人を憎むということが出来ない彼にとって初めて生まれた得体の知れないその感情。 持て余すように、否、それに構うだけの精神的余裕が無かったユーノにとって、それは自虐の方向へと向かざるを得なかった。 なのはが死んだことを認められなかった。受け入れがたかった。認めたくなかった。 その事実だけは、我慢ならなかった。 感情の捌け口が、苛立ち憎む対象を定められなかったユーノはだからこそ根本の原因こそを憎むようになっていた。 それが自分自身。あの日、あの時、高町なのはという少女の人生の転換期を起こさせてしまった自分自身。 自分さえいなければ彼女は死なずにすんだのではないのか……だからこそ、そんな風に自分を責めなければユーノ・スクライアは自分自身を保つことさえ出来なくなった。 それこそ自殺も何度も考えた、実行しようと寸前までいったことだってある。 けれど出来なかった。……それが彼女への赦しを得る為の“逃避”でしかないように思えてならなかった為である。 だからユーノ・スクライアがせめてもの贖罪……犯した罪の贖いとして自らに科したのが自分を殺すこと。 ただ只管に仕事に埋没し、誰かの為に働いて、その中で無様に、苦しみながら死ぬ。 彼女が辿った人生……その痛みや苦しみを万分の一でも自分もまた味合わねば赦される筈もないのだ、そう自分に言いきかせた。 誰かの為の仕事の中で、働き、戦い続けて……そして死ぬ。 それがユーノ・スクライアが無意識の内に贖罪と称して仕事の中へと逃げようとした理由だった。 ピンポーン。 それが自身の住まうマンションの部屋の呼び鈴が鳴らされた音だということにユーノが気付いたのは二度、三度と再び同じ音が鳴らされてからだった。 死んだようにベッドへとうつ伏せ眠り続けていた彼の意識は、その無粋な音によってあっさりと現実へと引き戻されてしまった。 「……誰だよ、いったい」 ポツリと小さく愚痴を漏らしながら不快気に眉を顰ませたユーノではあったが、これ以上続けて呼び鈴を鳴らされては堪らないと思い仕方が無いので応対する為に玄関へと向かう。 ただ寝に帰るだけになってしまっている我が家には、この半年で驚くほどに生活臭すら消えてしまった雰囲気であるが、それを今更にだからといって気にするユーノでもない。 むしろ彼にとって現状で最も関心があったのは、わざわざこの休日に自分を訪ねてきた人物が一体何者なのかというその一点のみだ。 なのはが亡くなって半年、まるで文字通りに仕事に逃げたユーノにとっては親しい友人たちはもはや寄り付いても欲しくない邪魔な存在でしかなかった。 誰もがお門違いな鬱陶しい気遣いを見せて自分に接してくること、それにウンザリしていたユーノはそれ故に自らで強く彼らを拒絶した。 連絡を絶ち、訪問にも応えず、徹底的に無視して仕事が忙しいという建前を盾に逃げた。 一人、また一人とそれでも諦めずにユーノを説得しようとしていた友人たちもまた、頑なな彼の態度にとうとう諦めたように離れていった。 それでいいと思った。後悔など欠片も浮かばなかったし、罪悪感で痛む心そのものが壊死していたユーノにとってそれはむしろ解放されたといっていい事実でしかなった。 自ら進んで皆との和を絶ち、孤独の闇へと落ちてしまったこと。 ……きっと、彼女が知れば本気で怒った事だろう。 ……いや、そんな事はどうでもいい。関係の無いことだ、考えるな。 自らの思考の致命的な脱線を無理矢理に修正しながら、兎に角、そういうわけでもう訪れるはずも無い此処へと今更訪ねて来たのは一体何者なのだろうかという考えへと戻る。 これでただの宅配便の類だったのなら笑えるし、むしろユーノも強く望んでいたのだが…… 「……どちら様ですか?」 「僕だ。クロノ・ハラオウンだ」 ……生憎と、運命の神様は早々そんな都合の良い展開は許してくれないらしい。 内心で神への罵倒と呪いを百通りほど並べながらも、しかしユーノはインターフォン越しの来訪者たる久方ぶりの友人のその姿に戸惑いを見せていたのも事実だった。 「久しぶりだな。かれこれ三ヶ月ぶりといったところか?」 「……そうだっけ。よく覚えてない。……それで何か用?」 クロノの言葉にぶっきら棒にそう応じている自分の姿は、或いは傍から見れば拗ねているだけの子供にしか見えないのだろうなという自覚がユーノにもあった。 近所のカフェテラスにて向かい合って席へと着いているこの現状……ハッキリ言ってユーノにとっても面白くもなんとも無いのは当たり前の事実だ。 本当なら自室で篭城を決め込んで追い払いたかったというのに、仕事関連で話すこともあるからなどと言う口車にホイホイ乗せられて外へと連れ出されていた己の迂闊さをユーノは呪いもしていた。 「……前にも言ったが、そういう態度は無理をし過ぎていて君には似合っていないぞ」 「放っといてくれ。僕の勝手だろ?……で、本当にさっさと用件を言ってくれ、折角の休日を君と過ごして潰す心算なんてこっちにはないんだ」 そうは言っているものの、実質今のユーノにとって休日というのはただの苦痛でしかない。逃避先であり考える事を放棄して作業へと打ち込める仕事を奪われる事は、彼にとって考えたくも無いことをどうしても思い出さされてしまうだけに苦痛の時間でしかない。 だからこそ出来るだけ纏まった休みを取ろうともせずに、単発の休日もただ自室で只管眠ることだけに費やして潰すことにしていた。 ……いっそのことギャンブルか酒にでものめり込めていればまだ救いがあったのだろうが、悲しいことにそれらはユーノ・スクライアにとっては致命的に噛み合わなかった。 「新しい研究論文の作成中か? 最近、学会にも顔を出していないようだし、そろそろ復帰するのか?」 ……研究? ああ、そう言えばそんなものにも没頭していたかと今更のようにユーノは初めてソレを思い出していた。 副職……というよりも趣味の領分でやっていたソレは、あの日を境にスッパリと切り捨てた。 下らないと思ったから。熱が冷めた、そんなものに意識を傾ける余裕が無かった。 そして何より――― 「……今更さ、あんなこと続けて何になるのさ?」 クロノの言葉を馬鹿にしたように鼻を鳴らしながらそれをユーノは切り捨てた。 そんな事して何になる? そもそもあんな娯楽と大差ないものを続けることにどんな意味がある? ……否、今更自分に楽しみを持つなどということがどうして許される? そもそも自分はどうしてのうのうと今も生きている? どうしてもっと苦しんでいない? 彼女をこんな世界へと巻き込んで、挙句の果てに死なせてしまったような罪深い罪人がどうして今も生きていて、人生に楽しみなどというモノを見出すことを許せる? そんなわけがないだろう。そんな茶番が許されていいはずが無い。 自分は罪人だ、贖罪をしなければならない。強すぎる生来からの責任感故にかそれは今のユーノにとって義務とも言っていいものになっていた。 償うことしかしてはならない。そう思っていて、それだけが今己が生きていてもいい理由だと思っているユーノにとって自身の幸せなどと言うものはもっての外だ。 だからこそ、少しでも自分に出来る社会貢献の在り方を償いの形へとする為に、ユーノは仕事にのみ没頭し続けた。……否、それを没頭し続けている理由にしようとしていた。 仕事に生きて、仕事に死ぬ。 彼女がそうしたというのなら、自分もまたそうしなければならない。 彼女よりも多く傷つき、多く苦しみ、そしてみっともない無様な形で最期を遂げなければならないのだ。 そうでなければ、彼女への償いには決してならない。 だからこそ――― 「ユーノ、君はそれが彼女が望んでいることだと思っているのか?」 そんなやり方が、結局は自分本位でしかない贖罪と言う名を借りただけの自己満足を、それこそ彼女が許すのかとクロノはユーノへと問い質す。 「……関係ない。僕は僕が決めたやり方で彼女に償う。……そうしなきゃならない責任が僕にはあるんだ」 全ての始まりは自分が原因だったのだ。ならば尻持ちや幕引きを行うのもまた自らであるというのは道理だ。 それがせめてもの高町なのはという少女を愛したユーノ・スクライアの矜持でもあり誠実さだとも信じていたからだ。 強固なまでの信念、しかしクロノがユーノの中に垣間見たのは十年前のプレシア・テスタロッサを彷彿とさせる妄執でしかなかった。 「……世界は、こんなはずじゃなかったことばっかりだ」 ユーノを真っ直ぐに見据え、目を逸らさないようにしながらクロノはハッキリとそう告げる。 「ずっと昔から、いつだって誰だってそうなんだ」 「………るさい」 「そんな辛い現実から逃げるか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ」 「……うるさい」 「だがな、ユーノ。……君自身がどう思おうと、どういう償いとやらを選んだとしてもこれだけはハッキリと言えるぞ」 「―――うるさい!」 耳障りな綺麗事、正論ばかりを並べ立てて告げてくるクロノが我慢ならないと言った様子でユーノは怒鳴りながら彼の胸倉を掴み上げる。 「そんな綺麗事はうんざりだ! 僕が決めた僕の償いだ! 誰にも邪魔なんてさせないし、口だって挟ませない! もうこれくらいしか……こんなやり方じゃないと僕は彼女に顔向けだって出来ないんだ! だから僕から最後の生き甲斐を奪うな!」 睨みつけが鳴りたてて並べる怒声、その願望。 目を血走らせ、苦悩に顔を歪ませながらも必死になってそれにしがみ付かずにはいられない、それだけしか残されていない者の執着。 無様で醜く、身勝手でみっともなくて滑稽だ。ああ、そうだろうとも。 けれど、もうこれしか自分が歩んでいい道は残されていないのだ。 だったら邪魔をせずに最後までその道を歩かせてくれればいいではないか。 誰に迷惑をかけているわけでも無い。だったら――― 「―――なのはが悲しむ」 ポツリと静かに、けれどハッキリと聞き逃す事を許さぬ強制力を伴って。 クロノは一歩も臆することも逃げることも無くハッキリと、ユーノを真っ直ぐに見据え返しながらそう告げる。 「彼女が悲しむ。そして僕らも悲しむ……それでも君は、良いのか?」 所詮は詭弁だ。死とは終わりであり、終わってしまった死者には何もありはしない。 悲しむのはいつも生者だけの特権であり、死んでしまって無に帰ってしまった者がだからと生者のその後の行いに左右されることなど決してありはしない。 悲しくともそれが現実。だからこそ自分が言っている事が詭弁でしかないことくらいはクロノ自身だって痛いほどに分かっていた。 けれど、これは理屈ではないだろう。情理を以って時に割り切ることこそが正しいと言うのなら、そんな正しさはクソ喰らえだ。 少なくとも、そこに笑顔のない正しさの何処に人の幸せがあるというのか。 「彼女が守りたかったものは何だ、ユーノ? 誰よりも傍で、一緒に始めた君がそれを分からないとは言わせないぞ」 いつだって何処かの誰かが笑っていられるように、その笑顔を守るという事を目的に、誰も理不尽に悲しみ、泣かない様にと願って戦っていたのが彼女のはずだろう。 そんな彼女に惹かれたからこそ、彼女に協力して管理局の判断を覆してまで彼女を行かせた事もあったのがユーノ・スクライアではなかったのか。 死者は悲しまない、ああ死人は何も語らない、微笑まない、怒る事も泣く事だって決して無い。 それは生きている人間の側の権利でもあり、義務なのだから。 そしてだからこそ、生者は死者の分までそれを引き継いで守っていかなければならないはずだ。 「彼女は笑いたかったはずだ。皆にも笑っていて欲しかったはずだ。……ならば、僕らが彼女の為にしてやれる事は彼女が愛し守ろうとした、その笑顔を今度は僕らが守っていくことじゃないのか?」 少なくともクロノ・ハラオウンはそう思っていた。 だからこそ、彼女たちを守るべき兄貴分としてそう判断し、そう受け入れて行動しようと思った。 それがクロノからなのはへと唯一示すことの出来る誠実な思いだと、そう思ったからだ。 「……ユーノ、君は―――」 「―――うるさい!」 尚も続けて説得に口を開こうとするクロノの言葉を遮るように怒鳴りながら、掴んでいた胸倉を投げつけるように離してクロノを突き飛ばしながら、ユーノはそのままその場を走り去っていく。 先程から往来の近くで何事かという言った様子で騒いでいるこちらを覗きこんでいた野次馬たちの中を問答無用で突っ切りながら、ユーノは何処とも定められていない逃避場所へとただ只管にソレを目指して逃げ続けた。 「……すまない。騒がせてしまったようで」 「……い、いえ」 何事かと騒ぎを聞きつけて恐る恐るやってきた店員へと謝罪し、ユーノの分も含めた支払いを終えながら、クロノは重く深い溜め息を吐いていた。 ……情けない。なんという様だろうか。口でどれだけご立派な言葉を並び立てようが結果的には親友一人の心も結局は救ってやれてもいない。 己に対しての無力感に悔しさにも似た思いを抱きながら、これでは本当に彼女に顔向けすることも出来ないとクロノは思っていた。 管理外世界出身者であり、元の世界では公にこちらでの身分を公表できない高町なのはは、表向き事故死という形で片付けられた。 これは地球に限らずミッドチルダ側においても正式な形として公表された。 管理外世界での任務を遂行中に起こってしまった不慮の事故。 エースオブエースとまで呼ばれ若手筆頭とされていた管理局の看板魔導師が本当に事故死だったのか、何らかの隠蔽工作が裏であったのではないのか……そう疑う者たちも出てきたのは事実だったが、管理局側もまた頑としてこの公表を覆すことは無かった。 まさかその件の看板魔導師がその管理外世界の異能者と単独戦闘を行った上に殺された、などという事実だけは局側としても絶対に漏らすわけにはいかない事実だった。 いつだって社会も組織も建前と面子によって保たれるのは世の常でもある。無用な混乱や不名誉な風聞を発生させないために、次元世界の守護を自負する組織としても常にそれらの維持だけは最優先で保っていかねばならぬ都合がある。 故にこその事故死。……そう、彼女は不慮の事故で亡くなったのであり、その直前まであったとされる命令違反による行動や戦闘なども無かったこととされてしまった。 当然、それに対して彼女の行いを否定するような事だとしてクロノをはじめ反発の声を上げた者もまたいた。 しかし大局において優先すべきもの……そして彼女自身の名誉の為にもこの公表が一番誰も傷つかない事なのだという上からの決定は覆すことも出来なかった。 彼女は最後まで管理局の任務に従事し、戦い続けた。決して背信の意を唱えた反逆者ではない。 管理局側としての世間へのイメージとしてもその認識だけは是が非でも死守したかった。故に生前の直前までの命令違反に抵触する問題行動等も特別に不問とされる扱いとなった。 彼女の生のその意味を偽りで汚されたような気がして、どのような理由であれクロノとしてもそれは我慢のならない事だった。 ……それでも、それを知らない者。ヴィヴィオをはじめとした彼女の家族や仲間達が抱いていた彼女への想い。 それを考えれば強硬なやり方でそれらすらも傷つけかねないことをクロノ自身もまた躊躇われたのは事実だった。 「……君は、僕を恨んでいるか?」 ベルカ自治領にある教会が管理する墓地の一角、其処に新しく建てられた一つの墓標。 他ならぬ高町なのはの墓前にてクロノはそう尋ねていた。 此処に彼女は眠っていない。この墓の下にあるのは建前上作られただけの空っぽの棺桶。 故郷の海鳴にある彼女の家族……高町家にある墓もまたそれは同じだった。 「……君は今でも、あの大地で夢を見続けているのか?」 彼女の亡骸……それは彼女を最初に発見してくれたホーリー隊員が丁重に葬ってくれたのだという。 遺族や自分たちの感情を優先するならば、作ってもらった墓を掘り返してでもこちらに彼女を連れて帰りたかった。 少なくとも、その義務が自分にはあると思っていたし、彼女の家族の元へ彼女を還すのは自分がやらねばならない最低限の責務だとも思っていた。 しかし諸々の事情……上層部の不興を買った彼女の行いは、例え不問に付すと建前の上においては結論付けられようとも消えることはなかった。 実質的には反逆者であり、遺体の損傷も酷く、土葬されてから時間が経過しすぎていたという諸々の理由、事の真相をマスコミへと勘付かれる事を危惧した上層部の意見・決定によって彼女の亡骸は連れて還られもせずにあの大地へと置き去りにされた。 なのはの訃報を彼女の遺族へと伝えるのと同時に、その彼女を彼女の家族の下へと連れて還ることが出来なかったのは、クロノ・ハラオウンにとっては残りの人生をもってしても背負っていかねばならない業であり、責任でもあった。 「……だからこそ、殴られるくらいは覚悟していたっていうのに……」 君の家族は優しすぎる、そうクロノは悲しげな笑みと呟きを漏らす他になかった。 そう、なのはの葬儀……ミッドチルダで行われたものの方には自分とリンディが喪主を務めたそれだが、故郷である海鳴で行った際、それを務めたのは彼女の父親である高町士郎だった。 この十年で彼と同じように家庭を持ち、子供までいるクロノからしてみれば士郎の心中はそれこそ察して余るもの。高町一家の家族間の仲の良さすら知っていればそれも尚更だ。 だからこそクロノは海鳴での葬儀の際、参列したその時に彼らから罵倒はおろか殴られ追い返されることすら甘んじる覚悟を持っていた。 彼女が選んだ道であり選択であれ、彼女にその道を示し、預かったのは自分たちだ。その責任が当然あるのは理解しきっていたことでもある。 少なくとも、士郎たちには自分たちを恨むだけの資格と権利がある。これは理屈や正しさを云々としたものではない、人としての感情としてだ。 許されるなどとクロノもリンディも思っていなかった。そう思うことも間違いだと思っていた。 むしろ、恨み言を言ってくれることを……明確な責任をこちらへと自覚させてくれることを或いはクロノ自身も望んでいたのかもしれない。 けれど、その高町家……喪主を務めた彼女の父でもある士郎は決して恨み言の一つすらクロノたちには零そうともしなかった。 ただ彼は悲しそうに笑いながらその事実を告げただけ。 『……あぁ、やっぱり血は争えなかったということですかね。あいつもやはり俺の娘……最後まで頑固に、自分のやるべき事、やりたい事を貫いたんでしょうね』 その行動の成否や善悪はその真実を伏せられている士郎には分からなかっただろう。 だがそれでも父親として、娘が最期まで己を貫き通そうとした生き様を彼は察せていたのかもしれない。 『……最期まで、娘がお世話になり本当にありがとうございました』 そう告げて深々と頭を下げてきた士郎の姿を見たからこそ、クロノの罪悪感は益々深まるばかりでしかなかった。 居た堪れないその光景、むしろ土下座で詫びねばならなかったのはこちらだったというのに。 高町士郎は、そして彼の妻でありなのはの母でもある桃子は、クロノたちを決して恨もうとはしてこなかった。 ……その事実が、ただただクロノには辛かった。 「君に自覚があったかどうかは分からない。だが君が皆を愛していたように、皆もまた君を愛していたのは間違いない事実だ」 これだけは、この事実だけは彼女に伝えておきたいと、だからこそ一つの決意を持ってクロノ・ハラオウンは高町なのはが眠らぬその墓へと告げる。 この形だけとはいえ墓を通じてでも、あの大地に眠っている彼女へと己の想いを届かせる為に。 「君はよく頑張った。……上層部の評価やその事実はどうであれ、僕は最期まで君が君自身を貫き通したことに関しては、立派だったと思う」 元々、こちらの指示を違反するなど最初に会った時から何度もあって、その度に頭を痛ませられてきているのだ。今更それにどうこう言うつもりだってクロノにはない。 だからこそ、どんな形であれ、やり遂げたその生き様を彼は素直に讃えたかった。 そしてだからこそ――― 「……後は任せろ、などと言えた立場じゃないが……それでも、君が確かに愛し護ろうとしたものは、僕の方でも出来るだけ護ってみせる」 例えば、彼女の……いや、彼女や義妹たちの夢の集大成でもあった機動六課。 例えば、彼女もまた好きだったのであろう、ユーノ・スクライア。 例えば、彼女にとって最愛の娘であっただろうヴィヴィオ。 償いの対象たる高町家を含めても、これらは必ずに己の力で何としてでも護っていくことをクロノ・ハラオウンは確かに誓う。 だから、こっちは大丈夫だから…… 「君は、もう休んでいい。ゆっくりと安心して眠ってくれ」 これまで働きすぎだったのだから、と自分が言えた義理でもないかと苦笑を浮かべながらクロノは告げる。 だが間違いなく、これは真剣に違えられない確かな誓いでもあったのだ。 「それじゃあ、また来るよ。今度は他の皆も一緒に連れて」 最後に、彼女の墓前へと穏やかに告げながらクロノは踵を返して墓地を去る。 此処まで足を運んだ以上、騎士カリムに挨拶はしていっておくかと考えながら、真っ直ぐに振り返らずに黙々と進む。 『クロノ君―――頑張って』 不意に、そんなもう二度と聞けないはずの声が聞こえた気がして、クロノは弾かれたように反射的に振り向いていた。 だが当然、振り返ったところでそこに誰かがいるはずもない。あるのは最前からの変わらぬ自分が持ってきた花が添えられた高町なのはの墓のみ。 ならば幻聴、行き着く結論として、そしてリアリストを自負するクロノ自身にとってもまたそれは当たり前のことであるはずだった。 だがそうであるはずなのに……今回だけは、そんな自分がらしくもない解釈に行き着いたのは或いは感傷に流された故にか。 きっとあれは、彼女―――高町なのはからの応援……などと考えてしまったのは。 どちらにしろ、それでも良いとも思った。己のキャラでもないが、それでも今はそんな考え方もまた悪くは無い、と。 エイミィからも時折呆れたように言われてもいる。偶にくらい、ロマンチストになるのだって悪いことではないと。 今が丁度そんな時か、そう思わず微笑を零しながら、クロノは振り返った彼女の墓へと毅然としたいつもの……彼女たちが信頼を寄せてくれた兄貴分の態度でしっかりと告げた。 「―――ああ、任せてくれ」 それに応えてくれる様に、風が吹いた。 目を覆うような突風というわけでもない、どこか心地気で優しげすら感じる季節違いの春風を連想させる風だった。 これは彼女が応援してくれているのかもしれないな、そんな勝手な自己解釈をしながらクロノは再び歩き始めた。 やるべき事は多い。幾らでもある。そしてそれら全てが難しい。 だが例えそうだとしても、諦めない。 最期まで彼女がそう貫いたように、自分もまたそうして行こうとクロノは決意していた。 彼女のもういないこの世界で、せめて彼女の為に残された何かを成し遂げよう。 クロノ・ハラオウンもユーノ・スクライアもまた同じ。 生き方も、歩むべき道も、進み方も違う彼らではあるが、共通点は一つだけある。 それは――― 彼女のいないこの世界で、それでも自分たちは生き続けなければならないということ。 その結末の果てに、彼らに何が待っているのか彼ら自身にも分からない。 そして、それは彼らを見守っているであろう彼女もまた同じ。 生きている限り、生き続けている限り、それは終わらない戦いも同じ。 それでもまだ、彼らの新しい償いという戦いは続いていく。 これはただ、舞台が大きく動くこととなる前兆を前にあった、そんな彼らの物語、その幕間の一部に過ぎない。 次回予告 第九話 無常矜持 無法の中のルールは、混乱によって駆逐された。 それでも希望を持ち続ける者は…… 踏みにじられる事を望む草花なのか? カズマよ、劉鳳よ。 花は……君らを待っている。 目次へ=www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3108.html 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フェイトの地雷を踏むエリオ 作者: ID tTVnzd4H 14-597のつづき かくしてユーノに食事まで(ワイン二瓶空っぽにして)振舞ったアルビーノ家。 ルーテシアからは『人を困らせて遊ぶのは駄目』と宥められている内に一本の電話が掛かる。 相手は、メガーヌの腐れ縁にして悪友のクイント・ナカジマであり、用件も重ねて談笑話が続いていた。 <ちょっとメガーヌ。またスクライア君の事、からかって遊んだんだって?> 「あら?私はただ事実を申しただけですわよ。もうちょっとノリがよくて誘惑の駆け引きとか憶えたら完璧なのにね……」 <やめときなさい、うちの子達泣かすような片棒になりたくないわよ。はあ、ゼスト隊長一筋だった頃の純粋な貴方は何処に言ったのかしら……ルーちゃん睨まれても知らないわよ> 「ご心配なく。アノ子も知らない内に女の戦いに身を焦がす身。私の気持ちもわかってくれるわよ」 <………そっちの方が余計に心配ね。くれぐれも火種にならないようにね。リンディさんからにらまれそうだわ> 「火種だったら、そちらのスバルちゃんやギンガちゃんが作りそうで怖いわ。確か家庭教師してもらってるんでしたっけ?」 <ギンガが大学志望ですからね。言っておきますけど、家とスクライア君は健やかなる愛と生活が溢れていますからね、おほほほ> 「はあ、ゲンヤ君には怖くて聞かせられないわね。本当に惚気られると反応に困りますけどね。とにかく用件の方は」 ……一方でこちらはハラオウン家。 暖かな食事と会話が弾むはずの家族団欒の一時の筈だが…… 「ねぇ、フェイトさん。ユーノ先生とルーのお母さんって付き合ってるんですか?」 などというエリオの爆弾発言のせいで緊迫した空気が漂う爆心地とかしていた。 (あううう、やっぱりストレートすぎましたかね……) (直球ど真ん中デッドボールさ!一体何を見たんだいエリオ、キャロ!) (で、ですからルーちゃんのお家で遊んでたら、メガーヌおば様とユーノ先生が一緒に帰ってきたんですよ。そしたら……) (何だよそれ!どうしたもこうしたもないさ!フェイトにユーノ関係の話は地雷だって何回もわかってるだろう) (落ち着きなさいアルフ、まったくフェイトも昔から感情表現が下手というか、思いっきり甘えればいいものを) (リニスさん、それは無理難題かと。アリシアさん、フェイトさんのお姉さんなら、お願いですから何とかして下さいよ!) (あのね。私がどうのこう言っても今のフェイトの耳には戦場の龍に説法で聞きはしないって。はぁ後からユーノ呼び出すしかないかな……) 以下、念話で繰り広げられる山猫の説教に耳を傾けるお子様二人。 呆れるアルフと妹を宥める手を考えるアリシアの横では、本日のオカズのチキンクリームシチュー……を食べるスプーンをからからと廻すフェイトの姿があった。 当然の如く、目の焦点はあってなく宛らフェイトの 「うふふふ……本当にユーノったら人の気もしらないで……でも人助けしないユーノなんて考えられないし、でも綺麗な女の人ばかりなんて……はぁ、私が負けちゃいそうだよ」 14スレ SS フェイト ユーノ
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R.O.D.O.T Link R.O.D.O.T antenna ■Antenna■ R.O.D.O.T 楽描き格納戸 0-MATERIAL 茜猫 チェき14歳 OWN RAGNAROK 小作人列伝!! 魔法少女リリカルなのは ポータル「時空管理局」 ラグナロクオンライン日本公式 初心者支援会 dey ふらすこ。 The Winter’s Tale 魔法少女リリカルなのはA’sと、ユーノ・スクライアを魂で応援するサイト 琥珀さん好き好きー症候群 NNN Ragnarok Mastery ドット絵保管庫 R.O.M 776 らぐなのかんづめ TalesWeaver日本公式 D-SIZE らぐどっと アノマラド観光案内所 Last-Modified 2021/12/08 13 41 54 おまけ なんでも投票箱 テストページ@Wikiモード テストページ@ワープロモード . Wiki CSS リンクフリー rァバナー ■ 管理用 メニュー 右メニュー
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* 作者:V62ho9Dq 海鳴・ハラオウン家の居間には緑と赤と茶が一つずつと、金が一組あった。 「うーん、お汁粉もなかなか美味しいわねー」 「流石にそれには砂糖かけないんですね」 「出来た後はなかなか溶けないから、小豆を煮込むお湯にたーっぷり入れておいたのよ」 「さいですか……」 こたつの対面に座るリンディに、顎を乗せてげんなりとした顔をするのはユーノ・スクライア(10歳)だった。 「ねえ、リンディさんって体大丈夫なの? 味覚が鈍ってるのって結構危険な病気の前兆だったりするんだけど」 ユーノは眉を顰めながら右隣りに座るフェイトに囁く。 「シャマルの健康診断では内臓系の異常は何もなかったんだけど…… いいかげん私も最近心配なんだよね」 「そうなると、異常は頭か……」 「二人ともー?聞こえてるわよー」 引きつった笑みを張り付かせながらリンディが介入する。 「まーユーノくんの言うことも一理あるかなー」 「あたしも最初見たときはびっくりしたからねぇ」 茶化すように笑うのがリンディの左隣り、ユーノの右前に座るエイミィで、 次いで追撃するのはユーノの左脇に寒さで丸まる犬形態のアルフだった。 「もう、みんな酷いんだから」 皆は顔を見あい、一転してしゅんとうなだれるリンディを笑った。 しかし、突然がちゃりと乱暴に開かれたドアが笑い声を遮って注目を集める。 「……おい、フェレットもどき。どうしてお前がうちにいるんだ」 気怠げに顔を手で押さえながら寝間着姿のまま現れたのはクロノ・ハラオウン(15歳)だった。 「やあやあクロノ・ハラオウン提督様は随分遅いお目覚めなんですね。 ふん、寝間着も真っ黒なんだな。ファッションのつもりなのかい?」 全く知りたくない事実をありがとうよ、 と珍しく隠そうともせずに毒を吐くユーノにクロノはムッとした顔で喰いかかった。 「僕は昨晩まで現場出動だったんでね。大目に見て欲しいところだ」 「それは奇遇だね。 僕もつい昨晩、海鳴から呼び出されて無限書庫に缶詰でどこかの提督に事後報告書を書かされていてね」 ぐっと唸るクロノにユーノは続ける。 「ついでに今日も仕事で、 書庫の運営と司書の体制について話があるとリンディさんに呼ばれた所だったんだよ」 「ふん、そいつはご苦労様だな」 ぞんざいに返すクロノにユーノの額に青筋が浮かぶ。 二人の険悪な雰囲気にエイミィはどうしたものかと苦笑した。 「もう、クロノ君ったら。新年早々ユーノ君に会えて嬉しいのは分かったから早く座んなよ」 「な、何を言っているんだエイミィ!誰がこいつなんかと!」 ぽんぽんと自分の左隣りを叩くエイミィにクロノは焦ったように捲し立てる。 「ユーノ君も今日は仕事とか言っちゃって、フェイトちゃんと会えて嬉しがってたくせにー」 「え……」 「なんだと!?おいユーノ、一体どういうことだ!」 「いや、それは忘年会に出れなかったからで……」 横で顔を赤くして俯くフェイトとずかずか迫りくるクロノの様子にユーノは慌てて返した。 してやったりとエイミィはにししと笑う。 しかし、やり込められた気がしてならずにぐぐぐと唸るユーノの頭に、一条の光明が落ちる。 それは、情報通の司書から聞いた話。 思い出すにつれて、意地の悪い顔になっていくのを自分でも感じながら反撃する。 「ときに、エイミィさん。お二人はいつ入籍なさるんです?」 ピシリと石のように硬直するのは、エイミィと、その脇に座ろうとするクロノ。 これは黒だなとユーノはほくそ笑む。 フェイトとリンディはがばっと身を乗り出して固まる二人に顔を近付ける。 「いえ、先日クラレガンの中央公園で熱い抱擁を交わすお二人を見かけたもので、ついね。 おや、この様子だとリンディさんたちにはまだ言ってなかったんですか。これは重ねて申し訳ありません」 「そうね、それは初耳ね」 「エイミィ『姉さん』、ちょっと詳しく聞かせてもらえるかな?」 エイミィとクロノはにやにやと生暖かい笑みを浮かべたリンディとフェイトにじりよられて一歩押され、 しかし身を寄り合わせて仲睦まじくユーノを睨んだ。ほーほけきょと長閑なメジロの声が空しく響く。 応えた様子もなくからからと笑うユーノを加え、元日のハラオウン家は概ね平和だった。 18スレ SS エイミィ・リミエッタ クロノ・ハラオウン フェイト・テスタロッサ ユーノ・スクライア リンディ・ハラオウン
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「この会場……転移魔法が使いにくいのかな? ちょっと集中してみただけなのに負担が大きいし、そんなに遠くに飛ばせないみたいだ。 この分だとトランスポーター・ハイも使えるか怪しいな。これが主催者の言ってた『能力の不調』なのか……?」 ユーノ・スクライアは突然の出来事に動揺していた。 しかし、「何とかしなきゃ」とも強く思っていた。 彼は魔法攻撃を防ぎ、敵を拘束し、対象を転移させることに長けた結界魔導師である。 何らかの魔法技術が悪用されてこの事件が起こったのならば、自分こそが解決に手を尽くさねばならない。 時空管理局の民間協力者として、一魔導師として、ユーノは即座に決意していた。 「“魔女の口づけ”なんていう魔法技術は僕も聞いたことがない……僕の知らないレアスキルなのか? でも僕らの命を握りたいだけなら、それこそ爆弾付きの首輪や、特殊なバインドを用いるだけで足りるはず ……いや、それなら、僕が人間の姿に戻った時点で首輪が破損するか爆発する危険性があるな。そういう意味じゃ“刻印”だったのは幸いだったのか」 高町家にいた時から連れて来られたために、ユーノの姿はフェレットのままだ。 ジュエルシードの回収が終わった今となってはいつでも人間の姿に戻れるけれど、変身前後で“魔女の口づけ”がどうなるのかも確認したかった。 できれば鏡のある場所か、誰かと交渉する際に変身したい。 「ひとまず、どこか鏡のある場所で、“魔女の口づけ”とやらを確認しておきたいな。もしくは、早く誰かと合流しないと……なのはかフェイトと会えるのが理想なんだけど」 フェレットの姿のまま考え込んでいた時、ユーノのヒゲがぴくりと動いた。 ぞわり 殺気のこもった寒気が、ユーノの体にのしかかった。 地面に身体を伏せ、他者からの攻撃に備える。 びきびきと何かが凍りつくような音がして、ユーノは戦慄する。 魔力反応も何も無しに、目の前から人形が出現したのだ。 氷の人形だった。大きさは人間の大人ほど。 何もない空間から生まれるように、足が生え、足から胴体が生まれ、胴体から腕が生えて、3体ほどがユーノを囲む。 (傀儡兵……? いや、傀儡兵を無から生みだすことはできないし、転移魔法で飛んできた様子でもない!) 氷人形が、ユーノを叩きつぶそうと腕を振りかざす。 「チェーンバインド!」 ユーノの足元に、魔法陣が輪を描く。 翠色の鎖が何本も、人形全てに巻き付いて固く拘束。 腕に、首に、足元に巻き付いた鎖は、人形をぎりぎりと絞め上げ、ぱきんと音を立てて破壊した。 (氷にしては強度が強い……ということは、遠隔操作の魔法? どこかに操ってる敵がいる?) しかし、周囲は深い木々で囲まれている。即座には居場所が特定できない。 ひとまず撤退しようかとも考える。 しかし、決断する間もなく人形の“再生”が始まった。 再びバインドを発動。しかし人形は拘束されながらも、今度はバインドをその手のひらでつかんだ。 「なっ……!?」 人形の腕につかまれた箇所から、バインドが凍りつき始めている。 さらに後方から、新たな氷人形が2体出現した。 退路を封鎖され、ユーノは歯噛みした。 前方からはチェーンの氷が浸食し、ユーノごと凍らせようとせまってくる。 サークルプロテクションで全面を防ぐことはできるが、ユーノ自身がその場から動けなくなる。なにより、バリアの上から氷漬けにされる危険性もあった。 攻撃用の支給品はいくつかあるが、術者の居場所が分からなければ使いようがない。 人形を破壊するだけでは、すぐ再生されてしまう。 おそらく人形と少しでも接触すれば、氷が浸食して動きを止められる。 (僕を転移させて逃げるしかないか……でも、バインドを何本も使ってる上、転移魔法の負担が大きくなってるから間に合うか分からない……) イチかバチか。 人形に潰される方が早いか。転移が完了する方が早いか。 ユーノはバインドを解除して、魔力を集中させる。 人形の剛腕が唸る音。 間に合え。 桜色の光が、人形を貫いた。 (な……) ユーノはその光を、奇跡のように見上げる。 まばゆい光の矢が、ユーノの後方にいた人形を貫き、そのまま貫通。 前方の人形も続けて破壊する。 (なのは……?) 桜色の光に、おなじ魔力光を持つ友達の姿が重なる。 しかし、弓矢が放たれた先にいたのは、白い服の少女ではなく、桃色のドレスを着た少女。 頭の左右でまとめられた、桃色の髪。 魔法のステッキを湾曲させたような、ファンシーなデザインの洋弓。 少女は人形の破壊を確認すると、少しだけ笑って、続け様に矢をつがえた。 まっすぐ、放つ。 閃光と共に放たれた矢は、空中で拡散した。 何十本もの矢に枝分かれし、桜色の軌跡を描く。 全ての矢が、人形に必中。 氷の体に何本も桜色の矢を突き立てられた矢は、再生にも時間を要する細かさでバラバラに破壊された。 (これは……魔法?) 氷の破片が舞い落ちた場所に、次の瞬間少女も降り立った。 その速さも、普通の人間のものとは思えない。 ユーノとディパックを、ふわりと抱え上げる。 「危なかったね。色々説明したいけど、今は逃げるよ」 少女は飛ぶように身軽に、その場から駈け去った。 「もう大丈夫だよ」 しばらく逃げると、寒気も感じられなくなった。 (あの襲撃者も、諦めたのかな?) ともかく、ユーノは少女に命を助けられた。 あのまま少女が来なければ人形に倒されるか、転移に成功しても、この殺し合いの会場で安全な場所にとばされていた保障はない。 そう言えば、なのはとの出会いも、こんな風に命を助けてもらったことから始まったのだ。 「ありがとう……僕はユーノ・スクライア。君は?」 少女は明るい笑顔で名乗った。 「わたし、まどか。鹿目まどかっていうの。魔法少女なんだよ」 【D-8/エリア東部/深夜】 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]健康、変身後 [装備]弓矢(魔法少女としての武器)、ソウルジェム(魔力微消費) [道具]基本支給品、不明支給品1~2(未確認) [思考]基本:魔法少女として、殺し合いを止める。 1:ユーノ君って、しゃべるし魔法を使うし、キュウベェの仲間? 2:ユーノ君を守る。 3:マミさんと合流。さやかちゃん、ほむらちゃんを保護。 ※「まどかマギカ」10話、『一週目の世界』からの参戦です。 (ほむらと出会ってから、マミ死亡までの間) 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 [状態]健康、魔力を少し消費 [装備]なし [道具]基本支給品、不明支給品1~3(確認済み、武器として使えるものはあるらしい) [思考]基本:魔導師としてこの事件を解決する 1:君も魔導師なのか…? 2:まどかとの情報交換 3:なのは、フェイトとの合流 ※無印12話、PT事件解決後からの参戦です。 ※転移魔法の制限に気づきました。(魔力を大きく消費する上に、ある程度の時間がかかります。 また、移動範囲も半径百メートル以内。別の場所にいる複数人を移動させることはできません) 「何だ、あの弓矢と鎖は……?」 “仮面”をかぶった男は、仮面ごしの人工音声で疑問を口にした。 顔全体を覆う仮面の上からでも、微かに狼狽の色が読み取れる。 「ネズミ型のポケモンの技は見たことがない上に……あの矢はあの子ども固有の能力か? “呪い”の件といい、どうも未知のことが多いな。深追いをしなかったのは正解だったか」 放置されたディパック目当てで接近したものの、そばにいたオオタチ似のポケモンが、人の言葉を話していたことに驚かされた。しかし、ポケモンの口ぶりから、どうやら対主催側の者らしいと判断して始末を決断した。 そのマントの下に潜むのは、彼のポケモンであるウリムー。 それが初めから支給されていたのは、“仮面の男”の正体を隠す上で必要になるそのポケモンが、『仮面の男の(体の)一部』として見なされたからではないかと推測された。 (“仮面の男”としての力があれば力づくでの優勝は容易いと思っていたが……私の知らない能力者もいるようだし、ここは慎重に確実に始末していくのが得策だな。 何度も邪魔をしてきたブルーやシルバー、金色の瞳の小僧も来ているようだし) そう、彼は何の迷いもなく殺し合いに乗った。 何故なら、彼はとっくの昔から、覚悟を決めていたのだから。 愛するたった一匹のポケモンの為なら、どんな悪にでもなってみせる。どんな犠牲も払ってみせる。 他のあらゆるポケモンも、人間も、その為の道具にしてみせると。 「ヒョウガ、必ず、『願い』を叶えてお前の元に帰ろう。……そしてお前の両親を救ってみせる」 【D-8/エリア西部/深夜】 【仮面の男@ポケットモンスターSPECIAL】 [状態]健康 [装備]仮面とマント、ウリムー@ポケットモンスターSPECIAL [道具]基本支給品一式、不明支給品1~2(確認済み) [思考]基本:優勝して『願い』を叶える。 1:あの力は何だ……? 2:参加者を狩る側に回るが、危険を冒さず確実に勝利する ※参戦時期は、少なくとも“いかりの湖”事件以降。 ※ユーノ(フェレット姿)をポケモンだと思っています。 【仮面の男のウリムー@ポケットモンスターSPECIAL】 仮面の男が常にマントの下にしのばせているポケモン。 遠隔操作可能で、自動再生機能も持った氷人形を無数に生み06せる。(空気中の水分を原料にしているとのこと)。 最終戦では、氷人形を使って歴代主人公の一斉攻撃(リザードン、フシギバナ、カメックス、バクフーン、メガニウム、 オーダイル、スイクン、エンテイ、ライコウ+ピカチュウ2匹)を1匹でしのぎ、逆に圧倒した。 某掲示板の強さ議論スレで仮面の男が“チート”“神”呼ばわりされる原因をつくったポケモン。 Back 006The style of OTaku 投下順で読む Next 007魔法少女ほむら☆マギカ GAME START 鹿目まどか Next GAME START ユーノ・スクライア Next GAME START 仮面の男 Next